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「丹後ちりめん歴史館」開設のテーマ
崩壊の危機に直面している伝統的地場産業を如何にして再生させるか。
施設の要約
中国など近隣諸国から安価な着物地やネクタイなどのシルク製品が大量輸入されて、
丹後織物・西陣織物は産地崩壊の危機に直面しています。
今回の計画は、丹後地区で工業組合理事などを務める織物業者3名が、
それぞれの得意とする絹織物の専門技術を持ち寄り、
高付加価値型産地への早期転換を目的として丹後地区に於いて織物とデジタル染色の
連携した一貫生産型の工場を開設するものです。
白生地のみの生産地からの脱却をスローガンとして、
従来の複雑な繊維流通を省いた新たな販路の拡大を目指します。
また、この工場のデジタル染色試作品を常設展示販売し、地元繊維業界の従事者には更に技術公開することにより
丹後織物の高付加価値型産地への転換を支援します。
広報PRの手段として取引関係者以外にも丹後にお越しになる一般消費者向けに丹後縮緬の機りと
染色工程が視察見学できるよう整備し交流とPRを図ります。
技術的原理・特色や製造方法
京都府織物・機械金属振興センターによる長年の研究により
ハイパーシルク加工が完成し特許を取得。
現在、丹後織物工業組合中央加工場にて丹後シルク生地に
高分子ポリマーを特殊な触媒を用いて絹繊維内部に吸着させる加工を開始しています。
シルクの柔らかな風合いはそのままに、濡れても縮ます、シワになりにくく、
洗濯機で丸洗いでき、ブラウスならアイロンをかけなくても着られるほど。
丹後独自の縮緬風シボのある生地でも縮まないという画期的な加工です。
今回整備する工場では、このハイパー加工の利点を生かして、
着物は勿論のこと洋服・スカーフ・ネクタイ・カーテン・インテリア・祭事の絹衣装・法衣・
寝装など多用途の染色をこなす為の試作開発を図ります。
作業工程
デジタル染色工程の概略
生糸の撚糸→ちりめん織機による製織(広幅特殊織物の場合は外部工場)
→精錬、ハイパー加工、糊付け前処理(丹後織物工業組合)→コンピーター画像処理→デジタル染色→
蒸・水洗・仕上げ(専門業者及び丹後織物工業組合)→縫製・仕立て→納品
従来のシルク染色では、20色の色彩表現が限界な上に1柄の版代が約30万程度かかるため
500m以上の大量ロット染色が必要でした。
また、図案と版の制作から見本取りまで約2ヶ月の日数を要しました。
このデジタル染色システムは1600万色もの色彩表現が可能、
コンピーター上で色分解処理をするため版代も不要となり、
小ロット生産と2週間前後の短い納期で安価な生産が実現できます。
この事業を行うに至った動機
丹後産地の可能性を秘めたハイパーシルク加工は、従来の織り技術だけでは不可能とされていた
インテリア分野や洋装衣料製造が可能となり、
約一万五千人が従事する私たちの地場産業丹後織物業界にとっては、将来への夢が広がる革新的加工技術です。
しかしなから、この加工を施した生地をそのまま現在の室町白生地問屋筋へ提案しても、
海外から安価な繊維製品の大量流入により、その価格差で「良いことは分かるが相場で販売する白生地は
加工したことによる付加価値の評価が出来ないから仕入れは不可能」という問屋が大半であります。
それは消費者に提案するまでの流通構造が複雑な上に、
京都市内の染色作業が零細分業化で一貫生産していない為に
白生地の良し悪しが小売店やお客様まで伝達できないことが原因と言われています。
IT機器メーカーとの合同実験により、昨年11月京都国際会館において
JAGDA(日本グラフィックデザイナー協会)との合同による「タンゴでアロハ展」を開催。
これは、日本各地の著名なデザイナー50名の方にデジタル化されたデザインデータを頂き、
それを丹後の絹にダイレクト染色し
シルクのアロハシャツを仕上げて展示会を開いたものです。
全国の織物産地でも例の無い初めて催事で、参加のデザイナー様に好評頂きましたが
3日間のイベント展示のため、
一般の方々へのPRとはなりませんでした。イタリアのコモにあるような
常設展示場を備えた工場が必要と強く感じました。
私たちが織り上げた生地にダイレクト染色を施したシルク製品を
観光で丹後を訪れる消費者や他分野のメーカーに提案できるアンテナショップが
丹後産地内に絶対条件として必要なのです。
本工場の独創性について
プロのCGデザイナーはもちろんのこと、一般のお客様が作成されたCG作品や
絵画などの染め上げ、大切な人の写真・お子様の書いた絵・ペットの写真・思い出の風景などを
お洒落なハイパーシルクを使用したスカーフやはんかち・ネクタイ・アロハシャツ等に1m単位の小ロットで
染め上げ可能。また、着物の訪問着の場合、デザイン持込みから染め上げまで最短約10日で納品可能。
オリジナルのシルクネクタイは2本から製作が可能、最短約10日で納品できる。
法衣・郷土芸能や祭りに使用される絹衣装の製作にも適した加工技術です。
インテリア製品としてUVカット効果のあるシルクのカーテンが注目されていますが
ハイパー加工の処理技術の進歩によって、耐光性や強度にすぐれた
オーダーメイドのシルクカーテンの製作も可能となります。
これらの染色サービスは、産地内に今まで蓄積されてきたシルク生地の
高度な織り技術・前処理技術・染色ノウハウ・後加工処理施設が必要なため、
技術者や設備面で丹後産地のような一定水準以上の絹産地であることが第一条件となります。
したがって、織りからデジタル染色 常設展示場を完備した工場は日本ではじめての開設となり
小ロットのオリジナル品受注の分野においては大量ロットの輸入商品に全く
影響を受けず、海外製品との差別化が図れます。
新市場の創造、既存市場のシェアの獲得、市場拡大の可能性について
丹後全域の動向は、長引く伝統的地場産業の低迷に対応し各市町共に
観光産業部門の拡大に力を入れています。
私たち丹後の織物業者も同様にイタリア・コモ市のような
「シルクのファッションリゾート地」を目標に掲げ、風光明媚な天橋立で着物祭りを開催するなど
観光とリンクしたPR活動を展開しています。
この度、丹後ちりめん歴史館を開設するにあたり、この施設が新たな観光拠点となりえる施設であり、
また新分野のデジタル染色産業の研究拠点になると、観光・織物業界共に期待度が高まっています。
初年度は、周辺観光施設の入込み状況を加味し年間10万人程度の視察見学者を見込んでいます。
このPR手法は通常の営業活動や業界の見本市などと比較しても経費が比較的少なくすむ上に、
大きな宣伝効果があると推測されます。
ADSLなど高速デジタル通信網のインフラ整備により、デジタル画像の受け渡しが
家庭レベルでも容易となってきました。
常設展示場での対面PRとインターネット利用の相乗効果によって
市場拡大の可能性があります。
また、大手コンビニの店頭にはすでにデジタル通信網が整備されつつあります。
デジタル写真画像を店頭で受け取り、
丹後産地で直接染め上げてプレゼント用のネクタイやスカーフとして縫製し
お届けするサービスの可能性について打診を受けています。
一般公衆回線の高速デジタル化により、一般小売店や直接消費者との
取り組みも同様の内容で拡大すると思われます。
利用者のメリットと利便性の向上、社会貢献度について、環境への配慮について
近年、中国などの海外産地から製品化して輸入される繊維製品の急増により
国内アパレル業者や着物メーカーの倒産廃業が相次いでいます。
これに比例して、国内で創作活動を続けているデザイナーの仕事の場も年々少なくなる傾向が続いています。
もはや国内での大量ロット生産は不可能という現実です。
そこで注目され始めているのがこのデジタル染色です。この施設の完成によりシルク染色の常識が変わります。
コンピュータ上で作ったデザインを絹地にダイレクト染色することにより、
今まで何十万円もかかった版代・フイルムスクリーン版が
不要となり1枚だけのスカーフ染色も可能になりました。
低コストで作品を発表できるメリットは非常に大きく、新人デザイナーの登竜門としても期待されています。
従来のシルクプリント機は大量の染料廃液が発生するため、河川の汚染が問題視されていました。
今回導入するデジタル染色機は、
環境に配慮した設計でほとんど染料廃液を出しません。
最後に
中国など近隣諸国から安価な着物やネクタイなどが完成品として大量輸入され、中国など近隣諸国から安価な着物やネクタイなどが完成品として大量輸入、
京都室町・西陣にある和装・ネクタイメーカーの倒産廃業が続いています。
さらにその下請けの産地である丹後織物には、現在もなお中小零細の3,500事業所が織物業に従事しています。
しかし、そのほとんどが零細なうえに分業下請けのため既存の流通から離れることができない状況です。
構造不況と呼ばれる複雑な流通構造の現状から脱却するためには、白生地だけの素材産地から多様との
シルク製品を直接消費者に直接提案できる産地への早期転換が求められています。
丹後産地が織物の総合産地として再生するための手段のひとつとして、
染色システムの研究と新製品の開発を目的に、地元の観光産業と連携し
一般観光客を取り込んだ効率の良いPR方法がもっとも効果的で実現可能な手段と感じています。
そのためには、絶対条件として常設展示販売場を備えた丹後ちりめん製織から
デジタル染色までの一貫生産工場が必要です。
今回のデジタル染色工場、「丹後ちりめん歴史館」開設にあたり、地域の期待も日増しに高まっています。
皆様の一層のご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。